USCPA試験のFAR科目の多くの論点の中でも、特に多くのUSCPA受験生が「苦手だ」「複雑でよくわからない」と感じるのが、ASC 842のリース会計です。
ですが、安心してください。この記事を最後まで読めば、その苦手意識は自信に変わります。
複雑に見えるリース会計も、ポイントを押さえれば確実に得点源にできますよ。
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なぜ今、ASC 842リース会計が重要なのか?
そもそも、なぜASC 842という新基準が導入されたのでしょうか?
旧基準では、多くのリース契約が「オフバランス」、つまり貸借対照表(B/S)に載らない形で処理されていました。
これは、企業の隠れた債務となり、財務諸表の利用者が企業の本当の財政状態を把握しにくいという大きな問題点を抱えていました。
そこで登場したのがASC 842です。
この新基準の最大の目的は、財務諸表の「忠実な表現(Faithful Representation)」を高めること。
そのために、12か月を超えるリースは原則としてすべて「オンバランス」、つまり資産と負債をB/Sに計上することが義務付けられました。
元IASB(国際会計基準審議会)議長のデイビッド・ツイーディー卿がかつて語った「私が死ぬまでに、バランスシートに載っている飛行機に乗ってみたい」という有名な言葉は、まさにこの変更のインパクトを象徴しています。
航空会社のB/Sに飛行機がほとんど載っていなかった旧基準の時代は終わり、今やリース資産は企業の財政状態を映す重要な鏡となっていますね。
この本質を理解すれば、試験対策は一気に楽になりますよ。
もし音声で理解したい場合は、USCPAどこチャンネルの【FAR基礎】リース会計(Lease Accounting)ASC842 解説 USCPA受験生向け をご覧ください
USCPA試験FARの試験対策も参考にしてください。
USCPA試験FARのBlueprintも参考にしてください。
1. FARブループリントのリースのタスクとスキルレベル
まず、敵を知ることから始めましょう。
AICPAが公表しているブループリント(出題範囲の詳細)で、リース会計(借手)がどのように問われるかを確認します。
以下の表は、受験生がどのようなタスクを、どのレベルでこなす必要があるかを示しています。
タスクは全部で4つあって、これから1つずつ確認していく内容そのものです。
| Representative Task | 日本語訳・解説 | スキルレベル |
| Recall the appropriate accounting treatment for residual value guarantees, purchase options and variable lease payments included in leasing arrangements for a lessee. | 借手にとってのリース契約に含まれる、残存価額保証、購入オプション、変動リース料の適切な会計処理を想起する。 | Remembering & Understanding |
| Identify the criteria for classifying a lease arrangement for a lessee. | 借手にとってのリース契約を分類するための基準を特定する。 | Remembering & Understanding |
| Calculate the carrying amount of lease-related assets and liabilities and prepare journal entries that a lessee should record. | リース関連資産・負債の帳簿価額を計算し、借手が記録すべき仕訳を作成する。 | Application |
| Calculate the lease costs that a lessee should recognize in the income statement. | 借手が損益計算書で認識すべきリース費用を計算する。 | Application |
この表からわかるように、試験では「基準を記憶・理解(Remembering & Understanding)」し、それを使って「計算・仕訳を作成(Application)」する能力が求められます。
分析(Analysis)する能力までは求められません。
2.FAR受験生が押さえるべきリース3つのコンセプト
複雑なルールに入る前に、ASC 842 リースの根幹をなす、3つの基本コンセプトをしっかり頭に入れましょう。
ASC842 リースの3つのコンセプト
- 原則オンバランス化
- 重要な登場人物
- 短期リースの例外は「基礎資産クラスごと」に選択
(1)原則オンバランス化
これが最大のポイントです。
リース期間が12か月を超えるリースは、原則として借手(Lessee)がB/Sに「使用権資産(Right-of-Use Asset)」と「リース負債(Lease Liability)」を計上しなければなりません。
これにより、企業のリースに関する権利と義務が明確になります。
(2)重要な登場人物
リース契約には資産を貸す「貸手(Lessor)」と、資産を借りる「借手(Lessee)」がいます。
FAR試験、特にMCQやTBSで問われるのは、圧倒的に借手(Lessee)の会計処理です。まずは借手の立場を完璧にマスターすることに集中しましょう。
(3)短期リースの例外は「基礎資産クラスごと」に選択
すべてのリースをオンバランスにするのは実務上煩雑です。
そのため、リース期間が12か月以下で、かつ借手が行使することが合理的に確実な購入オプションを含まないリースについては、ROU資産とリース負債を計上しない会計方針の選択(ポリシー選択)が認められています。
このポリシー選択は、基礎資産クラスごとに行います。
たとえば、オフィス賃借=不動産クラス、車両クラス、IT機器クラス など。
同一クラス内では一貫して適用する必要があります。
試験問題でも、まずこの例外に該当しないかを確認する癖をつけましょう。
3. TBS攻略の最重要分岐点!ファイナンス・リース vs オペレーティング・リース
さて、ここがリース会計の学習における最初の、そして最大の山場です。
借手の会計処理は、そのリースが「ファイナンス・リース」か「オペレーティング・リース」かによって大きく異なります。
この分類を間違えると、その後の計算がすべてずれてしまうため、絶対に落とせません。
判定はシンプルです。
以下の5つの基準のいずれか1つでも満たせばファイナンス・リース、いずれも満たさなければオペレーティング・リースとなります。
覚えるためのニーモニック「OWNER」と一緒に頭に叩き込みましょう!
ファイナンス・リースと判定される5つの基準「OWNER」
- 所有権の移転(Ownership transfer)
- 割安購入オプション(Written bargain purchase option)
- 経済的耐用年数(Economic life)
- リース支払額の現在価値(PV of lease payments)
- 特殊な資産(Specialized asset)
基準1:所有権の移転(Ownership transfer)
リース期間終了時に、資産の所有権が借手に移転する契約になっている。
基準2:割安購入オプション(Written bargain purchase option)
借手が行使することが「合理的に確実」な、市場価格より著しく有利な価格で購入できるオプションが存在する。
基準3:経済的耐用年数(Economic life)
リース期間が、原資産の経済的耐用年数の「主要な部分(major part)」を占める。
(旧基準の75%ルールは厳密な基準としては廃止されましたが、判断の目安として非常に有効です。)
基準4:リース支払額の現在価値(PV of lease payments)
リース支払額の現在価値が、原資産の公正価値の「実質的にすべて(substantially all)」に相当する。
(こちらも旧基準の90%ルールが目安として使えます。)
基準5:特殊な資産(Specialized asset)
その資産が借手のために特別に作られたもので、貸手にとって他に転用が効かない。
このOWNERの5分類、試験本番では1秒で判断するレベルにしてください。
ここが全ての計算の出発点。コケたら総崩れです。。
4. 【徹底比較】ファイナンス vs. オペレーティング:借手の会計処理の違い
リースを正しく分類できたら、次はその分類に応じた会計処理を適用します。
特に損益計算書(P/L)とキャッシュ・フロー計算書(C/F)への影響は、試験での頻出論点です。
この比較表は必ず暗記してくださいね。
| 項目 | ファイナンス・リース
(Finance Lease) |
オペレーティング・リース
(Operating Lease) |
| 損益計算書 (P/L) への影響 | 利息費用とROU資産の償却費を別々に計上。 (費用の合計額は前高後低になりやすい) |
単一の「リース費用」定額で計上。 (費用はストレートライン) |
| キャッシュ・フロー計算書 (C/F) への影響 (US GAAP) | 支払リース料のうち、 ・元本返済部分 → 財務活動 (Financing) ・利息支払部分 → 営業活動 (Operating) |
支払リース料の全額が営業活動 (Operating) |
| ROU資産の償却期間 | 所有権移転または割安購入OPの基準を満たす場合:経済的耐用年数 それ以外の場合:リース期間 |
リース期間 |
なぜこのような違いが生まれるのでしょうか。
それは経済的実態を反映しているからです。
ファイナンス・リースは、実質的に「資産をローンで購入している」のと同じです。
だからこそ、P/Lでは借入コストである「利息費用」と資産の使用である「償却費」が別々に表示され、C/Fでは元本の返済(財務活動)と利息の支払い(営業活動)が区別されわけです。
一方、オペレーティング・リースは純粋な「レンタル」と見なされます。
そのため、P/Lには単一の定額な「賃料(リース費用)」が計上され、支払いの全額が本業のコストとして営業活動に分類されます。
この理屈を理解すれば、丸暗記ではなく、ルールが直感的にわかるようになりますね。
ROU資産の減損:長期資産の減損モデル(ASC 360)を適用
使用権資産(ROU)は長期資産として扱われ、減損の兆候がある場合はASC 360(長期資産の減損)に基づき評価します。
減損が認識された場合、
- ファイナンス・リース:その後は利息費用+直線法の減価償却の構成は維持されます。
- オペレーティング・リース:オペレーティング費用は引き続き単一費用ですが、減損後は費用配分パターンが前倒し寄りになることがあります(ROUの帳簿額・残存キャッシュフローに基づく)。
試験では「どのガイダンスを使うか(842ではなく360)」の当て方がポイントとなります。
オペレーティング・リースでも費用タイミングが変わりうるので注意。
5. TBS問題攻略:覚えること・解き方・注意点
理論を学んだところで、いよいよ実践的なTBS攻略法です。
以下の3つのステップで、リース会計の問題を確実に解ききる力を養いましょう。
(1)これだけは覚えろ!必須暗記リスト
試験会場で迷っている時間はありません。
以下の項目は、反射的に出てくるレベルまで暗記してください。
暗記リスト
- リースの5分類基準(OWNER):瞬時に判断できるようにする。
- リース負債の当初測定:将来のリース支払額の現在価値(PV)であること。
- ROU資産の当初測定:リース負債 ± 調整項目(+ 初期直接費用 + 前払リース料 – リース・インセンティブ)。
- 割引率の優先順位:① 内在利率(Implicit Rate) が容易に分かれば必須 → ② それ以外は追加借入利率(IBR)。
- ファイナンス vs. オペレーティングのP/LとC/Fへの影響:上記の比較表の内容。
(2)TBS問題を解くための5ステップ
リース会計のTBS問題は、以下の思考プロセスで解くのが最も効率的で、ミスが少なくなります。
リース会計のTBS問題を解く5ステップ
- 問題文の精読:自分が借手(Lessee)の立場で問われていることを確認します。貸手(Lessor)の問題と勘違いしないように。
- リースの分類:OWNERの5基準に照らし合わせ、ファイナンスかオペレーティングかを最優先で決定します。すべての始まりはここからです。
- Day 1(当初測定)の計算:与えられた情報から割引率を決定し、電卓を使ってリース負債(PV)とROU資産を計算します。
- 償却スケジュールの作成:日付、支払額、利息費用、元本返済額、期末負債残高の列を持つ簡単な表(アモチゼーション・スケジュール)を作成しましょう。少し手間ですが、これが計算ミスを劇的に減らす最善の方法です。
- 期中処理の適用:ステップ2の分類に基づいて、正しい費用(利息+償却 vs 単一のリース費用)とキャッシュ・フロー区分を適用し、解答を導き出します。
(3)ここで差がつく!間違えやすい注意点
多くの受験生が陥るワナを知り、回避しましょう。
- オペレーティング・リースのROU資産の償却:ファイナンス・リースのような単純な定額法ではありません。P/L上のリース費用が定額になるように、(定額のリース費用) – (利息相当額)の差額(プラグ)として計算されることを忘れないでください。たとえば、年間の定額リース費用が1,000で、その年のリース負債から計算された利息相当額が350だったとします。この場合、その年のROU資産の償却額(B/S上の資産減少額)は、差額である650(1,000 – 350)となります。この計算により、P/L上の費用は常に1,000で一定に保たれるのです。
- キャッシュ・フローの区分ミス:特にファイナンス・リースの元本部分を営業活動に含めてしまうミスは致命的です。元本は財務活動! ここは試験官が最も狙ってくる罠の一つです。営業活動に含めた瞬間に0点だと思って、脳に刻み付けてください。
- 割引率の選択ミス:問題文に「内在利率が容易に判定できる(readily determinable)」とあれば、たとえIBRが与えられていても内在利率を使わなければなりません。
- 開示情報:TBSで開示(Disclosure)が問われた場合、リース負債の満期分析(Maturity Analysis)は「今後5年分+それ以降(thereafter)」の形式で表示することを覚えておくと、素早く解答できます。
私企業は「リスクフリーレート」をクラス単位で選べる(実務簡便法)
割引率は、判定可能であれば原則としてリース内在利率を用います。
内在利率が判定困難な場合、借手の増分借入利率(IBR)が基準です。
私企業(private company)は実務簡便法として、リスクフリーレートの使用を“基礎資産クラスごと”に選択できます。
選択したクラス内では一貫適用が必要です。
もっとも、リスクフリーレートは一般にIBRより低く、負債が大きめに計上されやすい点に留意してください。
- 「私企業限定」です。
- 試験では「IBRとRFのどちらが負債を大きくするか」の理解が得点差に。
リース(借手)の主な開示項目
- リース費用の内訳:オペレーティング費用、ファイナンス(利息・償却)
- キャッシュアウトフロー:現金支出(オペレーティング、ファイナンス元本 等)
- 加重平均残存リース期間:オペレーティング/ファイナンス別
- 加重平均割引率:オペレーティング/ファイナンス別
- 満期分析(非割引):向こう5年+それ以降の支払予定額、合計、現在価値調整とリース負債残高の整合
6. 試験直前!リース最終チェックリスト
FARの試験が始まる直前に、頭の中でこのリストを最終確認してください。
- 12か月ルールを最初に確認! 12か月以下なら短期リースの例外を検討。
- OWNERのどれか1つでも当てはまるか? YESならファイナンス、NOならオペレーティング。
- ファイナンス・リース = 「財務」と「営業」に分ける!(C/Fで元本は財務、利息は営業)
- オペレーティング・リース = すべて「営業」!(C/Fで支払額の全額が営業)
- P/Lは? ファイナンスは「利息+償却」、オペレーティングは「単一の定額費用」。
以上、「【FAR基礎講座】リース会計(Lease Accounting)ASC842 解説!USCPA受験生向け」でした。
ASC 842 リース会計は、一見するとルールが細かく複雑に感じられるかもしれません。
ですが、本質は「B/Sに企業の権利と義務を正しく載せる」というシンプルな目的から成り立っています。
そして試験対策上は、「①リースを正しく分類し、②その分類に応じた会計処理のパターンを適用する」という2ステップをマスターすれば、必ず解けるようになります。
今日学んだフレームワークを何度も繰り返し練習すれば、苦手意識は消え、リース会計はあなたの強力な武器になるはずです。
自信を持って、本番に臨んでくださいね。
USCPA試験については、どこの著書『USCPA(米国公認会計士)になりたいと思ったら読む本』も参考にしてくださいね。
短期合格のコツも記載しています。
(2025/11/02 09:34:52時点 Amazon調べ-詳細)
まだUSCPAの学習を開始していない場合「USCPAの始めかた」も参考にしてください。






