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【AUD基礎講座 2/4】監査リスク・アサーション・重要性を完全攻略!AreaⅡ

AUD基礎講座 監査リスク・アサーション・重要性
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どこ
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どこは、ワシントン州のUSCPA(米国公認会計士)だよ。

AUDは苦手というUSCPA受験生が多いようだよ。

決して難しい科目ではないのだけど、なかなか理解するのが難しいのかな。

少しでも理解しやすくなるよう、AUDのBlueprint(ブループリント:試験の設計図)に基づいて、AUDの基礎を全4回で解説していくね。

今回は2回目で、Audit Risk(監査リスク)、Assertion(アサーション)、Materiality(重要性)について、BlueprintのAreaⅡの部分だよ。

 

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AUD合格の鍵はエリアⅡにあり

USCPA試験のAUDにおいて、監査プロセスの中核をなすのが「リスク評価(Assessing Risk)」です。

この領域は、USCPA試験のAUDのBlueprint(ブループリント)「エリアⅡ:Assessing risk and developing a plan response」に該当。

 

配点が25-35%と非常に高く設定されています。

こんなに高いのは、リスク評価が合格に向けて極めて重要な分野であることを示しています。

 

リスク評価は、監査という航海を進める上で、どこに重点を置くべきかを見極める「羅針盤」でありり、同時にどこに危険な「暗礁」が存在しそうかを見つけ出す作業でもあります。

ここでの評価が監査全体の効率性と有効性を大きく左右するため、その理解は必須です。

この記事では、この監査の羅針盤を完全に使いこなすための知識を徹底解説します。

 

 

もし音声で理解したい場合は、USCPAどこチャンネルの 【AUD基礎 2/4】監査リスク・アサーション・重要性 USCPA受験生向け をご覧ください。

 

 

1. 監査の出発点:「監査リスク(Audit Risk)」とは何か?

監査リスク(Audit Risk)とは、「財務諸表に重大な虚偽表示(Material Misstatement)があるにも関わらず、監査人がそれに気づかず不適切な監査意見(Inappropriate Audit Opinion)を表明してしまう可能性」と定義されます。

つまり、見逃してしまうリスクということですね。

 

監査人は専門家として、この監査リスクを全体として「許容可能な低い水準(Acceptably Low Level)」に抑える責任を負っています。

そのために、まずどのようなリスクが存在するのかを正確に評価する必要があるわけです。

 

監査人は監査リスクを「許容可能な低い水準(Acceptably Low Level)」に抑えなくてはいけない。

 

 

2. 監査リスクを分解する!「監査リスク・モデル」の公式

監査リスクは、以下の「監査リスク・フォーミュラ(Audit Risk Formula)」によって、3つの構成要素に分解して理解されます。

監査リスク・フォーミュラ(Audit Risk Formula)

AR = IR × CR × DR

 

略称 英語名 日本語名 定義 コントロール主体
AR Audit Risk 監査リスク 重大な虚偽表示を見逃し、不適切な意見を表明するリスク。 NA(結果)
IR Inherent Risk 固有リスク 内部統制が存在しないと仮定した場合に、そもそも間違いが起こりやすい可能性。 クライアント
CR Control Risk 統制リスク 発生した間違いを、企業の内部統制(社内チェック)が防げない、または発見・修正できない可能性。 クライアント
DR Detection Risk 発見リスク 監査人が実施する監査手続きで、存在する重大な虚偽表示を発見できない可能性。 監査人

 

ここで、IR × CRを掛け合わせたものは「重要な虚偽表示のリスク(Risk of Material Misstatement, RMM)」と呼ばれます。

これは、監査手続を実施する「前」に、そもそも財務諸表に間違いが存在するリスクを意味します。

このモデルにおける最も重要なポイントは、3つのリスクのうち、監査人がコントロールできるのは発見リスク(DR)だけであるという点です。

 

監査人がコントロールできるのは発見リスク(DR)だけ。

 

 

3. リスク評価と監査計画の繋がり:「NET」の決定方法

監査人は、評価したRMMの高さに応じて、発見リスク(DR)の目標水準を逆算し、具体的な監査計画を策定します。この関係性は以下の通りです。

 

RMMが高いと評価した場合

全体の監査リスク(AR)を低く抑えるため、発見リスク(DR)の目標水準を低く設定する必要があります。

これは「見逃しリスク」を減らすことを意味し、より多くの、より信頼性の高い証拠を集めるための、より厳格な監査手続が求められます。

 

RMMが低いと評価した場合

発見リスク(DR)を比較的に高く設定しても、全体の監査リスク(AR)を達成できます。

これは監査手続を少し緩やかにできる可能性があることを意味します(例えば、テストするサンプルの数を減らすなど)。

 

この発見リスク(DR)の目標水準を達成するために調整されるのが、具体的な監査手続の3要素である「性質(Nature)、時期(Timing)、範囲(Extent)」です。

これらの頭文字をとって「NET」と呼ばれ、リスク評価の結果に応じてNETが決定されます。

 

発見リスク(DR)の目標水準を達成するために「性質(Nature)、時期(Timing)、範囲(Extent)」を調整する。

 

 

4. リスク評価の2つのレベル

リスク評価は、大きく分けて以下の2つのレベルで行われます。

 

財務諸表レベルのリスク (Financial Statement Level Risk)

財務諸表レベルのリスクは、たとえるなら、航海全体に影響する「天気」と言えます。

特徴としては、特定の勘定科目ではなく、財務諸表全体に広く影響を与えるリスクです。

具体例を挙げると、経営者の誠実性への疑問、業界全体の景気悪化、IT全般統制(IT General Controls, ITGCs)の脆弱性など。

 

アサーション・レベルのリスク (Assertion Level Risk)

アサーション・レベルのリスクは、たとえるなら、個別の「暗礁」や「浅瀬」と言えます。

特徴としては、個々の勘定科目、取引、開示項目といった具体的なレベルでのリスクです。

このアサーション・レベルでのリスクと対応策の検討こそがエリアⅡの核心部分であり、具体的な監査手続(NET)の策定に直接結びつきます。

 

リスク評価は財務諸表レベルとアサーションレベルの2つのレベルで行う。

 

 

5. 監査の核心:「アサーション(Assertion)」を理解する

「アサーション」とは、財務諸表の各項目について、経営者が暗黙的または明示的に行っている「主張」のことです。

監査人は、この主張が正しいかどうかを検証するために監査手続を実施します。

 

アサーションの例

たとえば、貸借対照表に「100万円の売掛金」が計上されている場合、経営者は以下のような主張をしていると解釈されます。

「100万円の売掛金」のアサーション

  • 実在性(Existence): その取引は実在する。
  • 権利と義務(Rights and Obligations): その売掛金を回収する権利が当社にある。
  • 評価の妥当性(Valuation): 100万円という金額の評価は適切である。
  • 網羅性(Completeness): 計上すべき売掛金はこれで全部である。

 

主要なアサーションのカテゴリー

主要なアサーションには、以下のようなものがあります。

主要なアサーション

  • 実在性 (Existence): 資産や負債が期末日に実在するか。
  • 権利と義務 (Rights and Obligations): 企業が資産に対する権利、負債に対する義務を有しているか。
  • 網羅性 (Completeness): 記録すべき取引や事象がすべて記録されているか。
  • 評価の妥当性 (Valuation): 資産、負債、資本が適切な金額で記録されているか。
  • 発生事実 (Occurrence): 記録された取引や事象が実際に発生したか。
  • 正確性 (Accuracy): 金額やデータが正確に記録されているか。
  • 期間配分 (Cutoff): 取引が適切な会計期間に記録されているか。
  • 分類 (Classification): 取引が適切な勘定科目に記録されているか。

 

監査人は、すべての項目・アサーションを均等に検証するわけではありません。

勘定科目の性質に応じて、RMMが高いと評価したアサーションに重点を置いて監査手続きを計画します。

  • 売上: 架空計上のリスクがあるため、「実在性」や「発生事実」が重要視されます。
  • 買掛金や費用: 計上漏れのリスクがあるため、「網羅性」が重要視されます。

 

RMMが高いと評価したアサーションに重点を置いて監査手続きをする。

 

 

6. 判断の基準:「重要性(Materiality)」の役割

重要性(マテリアリティ)とは、「財務諸表利用者の意思決定に影響を与える間違いの大きさの基準値」、あるいは「間違いの重大さを示すボーダーライン」のことです。

監査人は、この基準を用いて、発見した虚偽表示が財務諸表全体に与える影響を判断します。

監査計画では、階層的に重要性の基準が設定されます。

  • 財務諸表全体に対する重要性 (Materiality for the financial statements as a whole): 財務諸表全体で、これ以上の間違いがあれば利用者の判断に影響が出るとされる基準額です。
  • 実施上の重要性 (Performance Materiality): 個々の間違いは小さくても、積み重なって全体としての重要性を超えることを防ぐための、より厳しめの基準値です。これは、監査手続の範囲(Extent)などを決める際の具体的な作業目標値として機能します。

 

重要性の判断は、金額の大きさ(量的側面)だけでなく、間違いの性質(質的側面)も考慮される点が重要です。

たとえば、金額が小さくても経営者による不正を示唆する場合や、借入契約の条件に違反するような場合は、質的に重要と判断され、より詳細な調査が必要となります。

 

財務諸表全体に対する重要性と実施上の重要性と、階層的に重要性の基準が設定される。

 

 

7. 現代の監査における必須知識:IT環境と外部委託

現代のビジネス環境において、リスク評価を行う上で避けて通れないのがITの理解ですね。

クライアントのIT環境、特にIT全般統制(IT General Controls, ITGCs)の理解と評価は不可欠です。

 

ITGCsとは、プログラムの変更管理やシステムへのアクセス管理など、ITシステム全体の信頼性を担保する統制のことです。

ITGCsが脆弱な場合、そこから生成されるデータ自体の信頼性が揺らぎ、財務諸表レベルのリスクや統制リスク(CR)に直接影響を与えます。

 

また、多くの企業が給与計算やデータセンターの運用などを外部のサービス組織(Service Organization)SOC 1レポートです。

特に、内部統制のデザインだけでなく運用状況の評価まで含むタイプ2レポートを入手し、その内容を理解することが、統制リスク(CR)を評価する上で重要となります。

 

クライアントのIT環境(ITGCS)の理解は、現在の監査では超重要。

 

 

まとめ:AUD合格に向けた最重要ポイント

本記事で解説した内容は、AUD試験のエリアⅡを攻略するための核となる知識です。

合格のために、以下のポイントを確実に押さえてください。

  • 監査リスク・モデル(AR = IR x CR x DR)とRMMの考え方を完全に理解する。
  • リスク評価の2つのレベル(財務諸表レベルとアサーション・レベル)を明確に区別する。
  • アサーションの各種類と意味を理解し、それが監査手続(NET)にどう繋がるかの流れを把握する。
  • 重要性(Materiality)と実施上の重要性(Performance Materiality)の概念と役割を理解する。
  • ITGCsやSOC 1レポートといった現代的な監査トピックの知識を身につける。

 

最後に、USCPA試験はすべて英語で行われます。

したがって、ここで登場した重要な監査用語は、日本語の意味だけでなく、必ず英語で正確に覚えておくことが合格への近道です。

  • Audit Risk, IR, CR, DR, RMM
  • Assertions
  • Materiality, Performance Materiality
  • ITGCs, SOC 1

 

 

以上、「【AUD基礎講座 2/4】監査リスク・アサーション・重要性を完全攻略!AreaⅡ 」でした。

どこ
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USCPA(米国公認会計士)試験の AUDにおける「監査リスク、アサーション、重要性」に焦点を当てた解説をしたよ。

監査リスク・フォーミュラ(AR = IR × CR × DR)の各要素は理解できたかな?

監査人が唯一コントロールできる発見リスク(DR)が監査手続きの性質、時期、範囲(NET)の決定にいかに影響するかわかるかな?

また、リスク評価は財務諸表レベルとアサーションレベルの二つの視点で行われることも覚えておいてね。

監査人の評価の基準となる重要性(マテリアリティ)の概念と段階的な設定も重要だよ。

さらに、現代の監査においてはIT環境(ITGCS)の理解は避けられないし、外部委託先を利用する場合のSOC 1レポートも重要だからね。

USCPA試験の出題範囲(ブループリント)と関連付けながらよく理解して、得点源にしてね。

USCPA試験については、どこの著書『USCPA(米国公認会計士)になりたいと思ったら読む本』も参考にしてくださいね。

短期合格のコツも記載しています。

 

まだUSCPAの学習を開始していない場合「USCPAの始めかた」も参考にしてください。

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